汚い顔をしているくせに大声で偉そうにやかましく、それでいていっぱしに仲間面をしてくるその男が大嫌いだった。
「俺らァ、命賭けてタイマン張った仲じゃ、ヘッヘヘこれからよろしく頼むぜ」
ひしゃげて筋の通って居ない鼻の下を擦りながら、にやにや笑うその顔が大嫌いだった。
馴れ馴れしい。
実力には天と地ほど離れているのがどうしてわからないのか。
相打ちに持ち込めたのも、ほとんどが運と根性のおかげではないか。
「俺ァ根性だけにゃ、自信があるんじゃ」
根性。
はっ、笑わせる。根性、時代遅れの精神主義にはヘドがでそうだ。
その根性で私との勝負を相打ちに下した事で、私と対等だとでも言うんだろうかこの男は。

「な、飛燕。これからよろしく頼まァ」
「ああ、よろしく……富樫」

私は富樫が大嫌いだった。






「う゛ああああッ、あっ、あ゛、あ゛・――ッッ!!」
舌を突き出して滅茶苦茶に、喘ぎと絶叫を混ぜた声を喉から絞らせながら富樫は数度目の精液を噴き上げる。
噴き上げる、というのは正しくない。富樫の尿道を隙間なく押し広げ、抜き差しを繰り返す千本の隙間からびゅるびゅると行き場を失うように溢れ出るのが正し い。
腕も足も富樫の思うようには動かない、背後から首筋と肩口へ千本を突き立てられた瞬間、長らく正座をし続けた足のようにぶよぶよと働きを失ってしまってい る。次の瞬きの前には視界すらも失われて、後はやすやすとどこかの空き教室かへ蹴り入れられた。床に転がされ、起き上がろうにも手足が動けず芋虫のように 身を捩る事しかできない富樫は、確かに耳に笑いを含んだ吐息を聞きつける。
絶対的優位をよく理解した相手は、余裕を持った手付きで富樫の着衣を全て剥ぎ取り、迷わずそのペニスへ手を伸ばす。萎えていたそれを二三擦り、先端の包皮 をぐるりと剥き、もっとも敏感であろう先端の鈴口より容赦なく針のようなものを押し込んだのだ。
「ギッ、グ、ぐぁ、ぎゃあああああっ!!」
絶叫を楽しむようにぐるりぐるりと針を持つ手は押し広げられた鈴口を爪で抉る。富樫は不自由な身体のまま、腰をばたばたと跳ねさせて身悶えた。
押し込められた針には何やら液体、滑りをよくするだけではなく、それ以上に快楽を引きずり出すような類の薬が絡めてあったらしく、たちまちに富樫は絶頂に 達する。快楽というよりも衝撃が勝る、屈辱的なものだった。
「うあああ…あ、…ああ…」
精液をぶくぶくと針の隙間から噴き上げ、ぶん殴られたように真っ白くなった頭のせいで意味のない呻きを漏らす。だらしなく開いた脚の間をだくだくと精液が 伝わっていく。


一度で済むはずもなかった。視界の奪われた富樫はどこからともなく現れる手、指、それから針に幾度も幾度も狂うまでに責め立てられては精液を放つ。


開かされた脚の間には大量の精液が撒き散らされていて、強いむせ返るような臭い。半ば富樫は意識を飛ばしかけていたが、突き立てられた千本が抜き差しされ るたびに神経に爪を立てられたような激しい感覚が失神を許さない。
富樫の目には黒い目隠しが巻きつけられていて、彼には誰が自分をこんな目に逢わせているのか今を持ってはわからないはず。
よくよく考えればその千本、今富樫の首筋と肩、それから尿道へ突っ込まれた針にも似たその道具の使い手が誰なのかわかりそうなものだ。
しかし富樫にはわからないだろう、彼は嘲りの笑いを浮かべる。

「あ゛・あ…ッあ、うぐあアッ!!」
ずろろろ、尿道内部を時折引っかけるようにして千本を引き抜いた。引き抜かれたというのに富樫のペニスは尚も張り詰めたまま、脈打つ血管に赤黒く充血して いる。

(醜い)
引き抜いた千本をしげしげと眺めて、次いで新たなる薬瓶へと視線をやる。細長い、試験管のような形の薬瓶の蓋を開けると薄紫の薬液へ静かに千本を沈めてい く。引き揚げるととろみを持った液体が絡んで、もたもたと滴った。

にやりと笑みが灯る。

出すばかりで入れられるためには作られていないペニスの先端、鈴口は真っ赤に膨れてぱくぱくと醜く口をあけている。皮が捲れて肉の色を生なましく見せた、 もっとも敏感で、かよわいそこへ千本を宛がう。

(狂うかもしれない)
慣れた商売女ですら敬遠するほど強い薬である。処女に使おうものならそれこそ狂いを生み出す恐れもある。
(根性で、どうにかなるか?ふふ)


根性で耐えて見せればいいさ、そんな残酷さで飛燕は鈴口へ千本を突っ込んだ。
「―――――!!!」
耳を汚すほどの絶叫と、滑稽なまでに切迫した肉体の舞踊。目隠しの黒が色を濃くしている、泣いているのだ。根性がどうとかほざいたあの男がすすり泣いてい る。むせび泣いている。
たまらない気分になった。
ガラス製の千本を通して中の赤を見、蠢く肉を見、そして――

(後でどういう顔をするかな)

富樫の脚の間で白濁に塗れた紺色をちらりと見た。何よりも大切にしているのだと、聞かれもしないのに語った学帽が転がっている。
あの薬のせいで、富樫はこれから一昼夜は確実に地獄のような悦楽に犯されるだろう。精液を恥ずかしげもなく零すだろう、小便だって零すかもしれない。
手足の自由を取り戻して、目隠しを取った時、自らが貶めてしまった大切な学帽を前に富樫がどんな顔をするのか。



立ち上がりかけた飛燕は、初めて自分がひどく欲情していたことを知った。
閉ざされた部屋、富樫は一人突き落とされる。






私は富樫、貴方が大嫌いですよ。