自分にそんな趣味は無い。
相手だって同じだ、女よりも刀が好きなんじゃねぇかと疑ってた。
なのに今俺はどうしてこいつに足開いてんだろ。


「おい、赤石、先輩よっ…なんだって、」
なんだって、の辺りで一際激しい突き上げが富樫を襲った。
「ギャッ」
「うるせぇ」
ごつんごつんとさっきから富樫のと赤石の、二人分の腰骨だかがぶつかりあってうるさい。
富樫としては赤石が男同士のやり方を知っていたというだけで仰天で、もはや抵抗するしないの話でもない。
どうして、
そればっかりが頭の中をぐるぐるとして、赤石の脇に挟まれた右足と、肩にかつぎあげられた左足とががっぱり開くのも止めようが無い。
正面きって乗り込んでくる赤石の顔はいつも通りの富樫にとっていけすかない仏頂面だが、眉をひそめて何も言わず腰を突き入れていく無骨さは富樫も嫌いじゃ ない。だが抱き合う理由にもならない。
「んで、ア、俺、―――ううッ」
痛い、よりも熱い。

赤石はどうなんだろう、きつい筈ではある。いきなり突っ込もうとしたからさすがに富樫がほぼ懇願で、切れちまうからと繰り返したらシブシブ受け入れた。
受け入れたまではよかったが、何もしない。
「……おい?」
と富樫が青ざめて尋ねれば、
「済んだら言え、」
との答え。さすがに富樫も怒鳴った。
「ぶあっ、ばっ、バァッキャロォ!!なんだっててめぇのために、俺がケツほぐさなきゃならねぇんじゃ!!」
富樫の怒号を聞いても赤石は顔色一つ変えなかった。
変えなかっただけで終わらず、富樫の脚をぐいと開いて腰を進めてきたのだった。
「うおおッ!!テメェふざけてんじゃねぇぞ!!」
しかし赤石は尚も貴様がやれ、やらないのならこのままという無言の圧力をかけ続けている。眉間の皺はいよいよ深まって、赤石のアレときたら凶暴性を増して いる。
富樫はなにがなんだかわからないままゴムを寄越せと赤石へねだり、そんなものないと言われてまたも怒った。
「バァロォ!殺す気か!」
「面倒な奴だ」


大口開けてがなる富樫の口へ、赤石は人差し指を突っ込んだ。噛み付くかもしれない、噛み切ってしまうかもしれない、そんな迷いは一筋も無しに突っ込んだ。 富樫がフガフガと仰天していると口の中をぐるりと指でかき回し、引き抜いた。
たっぷり唾液で濡れた指を遠慮なくズブリと富樫のアナルに突き入れる、何の準備もしていなかった富樫、
「うぇええあああああ!!!」
サカリのついた猫が潰れたような絶叫を上げた、その声に赤石がかすかに笑った。更に指をぐるぐると三度ほど回すと、

いざ、

とばかりに富樫の脚を抱えたのだった。


まだ、
まて、
タンマ、
ちょっ、



切れない筈も無い。
バスタオルに血がしみこんで、恐らくもうバリバリと褐色のはずだと富樫は呆けた。
最早声も掠れ掠れ、時計のない部屋だったのでもう何時間もこうしているのかわからないでいる。
ただ揺さぶられているだけ、だがめくらめっぽうな突き上げにも不意打ちのような快感らしきものがあり、そろそろ出そうだとの兆しがあった。
「うあっ、あっ、やべ、」
やべぇ、言いかけて富樫が笑う。
「何がおかしい」
ただ突っ込んでは出しているだけかと思っていた赤石が素早く問う。見てたのかよ、富樫は少しおかしい気分になる。
「ヘッヘ、もう何度出したのか、ッわかりゃしねぇってのに…」
今更人前で射精する事にためらいがあったのだと富樫は暗に言った。赤石は首を小さく傾げると、
「構わん」
そう短く答えて、本当に遠慮なく何度目か引き抜くと富樫の腹へびゅるびゅるとぶちまけた。

ああもう。
富樫はめちゃくちゃになりながら、それでも声を殺して射精して、それからこみ上げて来た笑いに身を震わせる。
脇に抱えられた脚を、さっきから赤石の腋毛がくすぐっているのだ。
笑う富樫を咎めもせずに、赤石は尚も抱いた。




部屋のすみに酒瓶が転がっている。
ああ赤石って酒弱かったんだっけか、富樫はぼんやりと思う。
まさかこの時、責任は取ると翌朝宣言されるとは思っても居ない。