何を、したのか。
夕日へ向かう男に仕掛けた。夕日のよに熱い男へ仕掛けた。
トントン、と先行く富樫の背中を愛刀の柄で持って突く、富樫が振り向く。
隙逃さずに距離を詰めてゼロ射程の不意打ち、さらにマイナスの世界へ踏み込みたい。
「ンげっ!……も、桃、お、俺に、俺に今何ィしやがったんだァ!?」
恥ずかしげもなしに桃が述べる。
「恋さ」
夕空は恥ずかしげもなく雲を輝かせて真っ赤になっており、それは富樫の顔に浮かび上がった動揺。
その煮え立つ熱さも同等、触れた桃の指先も同様。
互いの唇に残る痺れは本当。
「もうどうしようもねえな富樫、てめぇもそろそろ腹くくれや」「え、伊達、何か言ったかのう」
遠巻きに、哀悼。
「恋さ、富樫」
桃は繰り返す、繰り返して落し蓋で煮含めるように富樫へ沁み込ませる。
富樫という男は出来損ないのイモのような男だから大分時間が掛かるが、それがいいと桃は思っている。
「詳しく聞きたいか?」
とろける夕日に照り映えて、桃の瞼が色づいた。
恋を、したのだ。