せめてCでいて

そりゃあアレさ、いいモンさ。
そう言う奴が目じりを下げるんで、俺としたら悔しくて仕方が無い。
俺はまだ知らない手のひらに責められた気がした。
【抜け駆け】


雑誌の女はFカップ。虎丸はだらしなくその女の胸に遠慮なく視線をヨダレのように垂らして、またぐらをズボン越しにゆさぶりなおした。興奮した弾みでアレ なポジションがズレてしまったのである。ポジション直しながらも視線は胸から外れない。面積の小さなビキニの水着からこぼれんばかりの豊かな乳房は虎丸の 心と股間を慰めた。可愛くないと評判のアイドルだったがハナから顔なぞ見ていない。そんなことを言えば女権団体の奥様はザマスな眼鏡の奥で目を吊り上げる だろうが、嘘偽りなく本当のことである。釈迦が寝転がるようにして、頭を肘枕で支えながら開いたページを見下ろした。
「ヒヒ」
ちょっと人には見せられないような顔で、虎丸はニヤけた。
「ええのうおっぱいは、イッシシ」
色萌え立ってほんのり春で雰囲気がピンクだ。音を隠しもしないでズボンのチャックを下ろしにかかる。普段さして器用でもないくせに指先は滑らかだった。
「テメーッ!!そりゃあ俺が買って来たばっかの本じゃねえか!!!」
バタンズダズダボコンバサ。
ドアが開く、畳の上をザリザリせわしげに近寄ってくる、虎丸の頭を拳骨でどつく、雑誌を取り上げる。
富樫は猿に似た威嚇をし、自分の胸へと雑誌を引き寄せた。本に向かって起き上がりながら伸ばしてくる虎丸の手を遠慮なく踏みつけにした。
「ぎゃっ、お、お前富樫よう何すんじゃわりゃあ!」
「わりゃあもうりゃあもあっかよ!!俺だってまだヌいてねぇのに、なんだってオメエが一番ヌキしてやがんだ」
金払え!とセコい事をがなる傷面は虎丸の横にどすんとでかい尻を座らせた。虎丸もしぶとく富樫へ向かって匍匐前進にじり寄る、目指すはFカップ。ずりずり 富樫の膝に上半身を乗り上げると、
「オオ、こりゃあいい本置きじゃねえか」
などとほざかれて頭の上へと雑誌のカドがごつんと振り下ろされた。イテー、と虎丸は間の抜けた悲鳴を上げる。
「おい虎よ」
「なあに」
「なあにじゃねえよ気色悪ィ声出してんじゃねえや、おい何しがみついてんだ」
富樫の太い腰に両腕回して、子供が母親に泣きついたよな格好である。富樫は虎丸の頭から本を退けると睨んだ。もともとこのまま虎丸の頭でエロ雑誌本気で読 むつもりも無い。腰を揺すると膝から転げ落ちて虎丸はごろんと仰向けに転がった。富樫は自分もうつぶせに少し離れたあたりへ寝転がった。
虎丸と富樫の部屋である。いびきが揃いも揃ってうるさくて、ついでに仲が良かった二人は同室であった。今日買って来た雑誌を、昼飯食ったら読もう読もうと 思って机に入れていたのがなくなったので、これはとアタリをつけたら案の定。
これ見よがしに歓声を上げてわざとらしくページをめくる。

「おおっ、」
「うおおお〜」
「乳はみ出しちまってんな」
「うひゃひゃひゃひゃ」
「すげえ、モロ見え!」
「やべえなぁ、ティッシュどこじゃティッシュ」

じりじりと耳を大きくした虎丸が、ぼうっとしている風を装いながらずりずり仰向けのまま富樫の方に近寄ってくる。ぴたりと富樫のわき腹に虎丸は身を寄せ た。富樫はうざったそうに身をよじる。虎丸は離れない。食いつきのよさに富樫は痩せ頬に盗み笑いをする。
「……おっぱい」
「なんじゃ虎丸、おっぱいがどうしたァ」
目線は雑誌のFカップ。意識はわきばらこそばゆさ。
「おっぱい!!!」
怒鳴りながら手足をじたばた、その動作の滑稽さに富樫の笑みがますます強くなる。もう知らぬ振りをするのもむずかしい。
「だァら、おっぱいがどうしたってんだ、うるせえな静かにしてろや」
「……おっぱい…」
虎丸の頭の中はおっぱいでいっぱいだ。
富樫の頭の中は虎丸でいっぱいだ。だったから虎丸の襲撃にもすぐに対応できなかった。
つい今の今まですぐ側でおっぱいおっぱい呟きながら拗ねていたかと思った男が自分の背中にのしかかってきたのだ、そして体重をかけながらしがみついた。虎 丸、悲鳴のような情けない声に喉をビンビン震わせる。

「おっぱい!!揉みてえ!揉ませて!!!あるじゃねえか!!揉ませろ!!!」
「うおっテメなにすんじゃ、あっこら、くすぐってぇだろ、おい!!」

おっぱい禁断症状に見舞われた虎丸にすれば、うつ伏せになった富樫の胸だって立派なDカップに見えたことだろう。学ランの前はいつだって全開、男に対して 使うのかどうかは微妙なラインであるがナマといえばナマ乳である。それも無残に畳に押し付けられて潰れかけた乳、もったいないとばかりに虎丸は富樫の胸へ 無理やり手を伸ばしてわし掴みにした。掴むほどはない胸である、だが虎丸はひたすらおっぱいおっぱいでその胸を揉んだ。

「揉みてえんじゃーっ!あるじゃねえか!ここに!!」
「ギャッ、おまえ馬鹿、痛ェ痛ェ痛ェ!!!」

薄い脂肪の胸をわめきながら揉みしだく虎丸、うつ伏せのまま床を叩いてギブをする富樫。いつしか虎丸は富樫を裏返してその胸に頬を摺り寄せた。

「富樫ー!!お前はなんだってFカップじゃないんじゃー!!」
「Fカップでたまるか!うおおおおっ何じゃ、あっちィのが、うおおおお!」

むせび泣きに近い主張に支離滅裂な訴えを繰り返す虎丸の目は正気ではない。富樫は虎丸がここまでおっぱい好きだったとは知らなかった、またここまでおっぱ い禁断症状が進行していたとも知らなかった。富樫の悲鳴も上がる、腰のあたりにぶつかる熱源はなんだ、ヤキイモか、ヤキイモなわけがあるか、誰が股間にヤ キイモ隠し持つ奴があるか!混乱の極みである。

「プルンプルンの乳はどこじゃあああ!!」
「ンなモンあるか!!!目ェ覚ませ目ェ!!」





富樫渾身のビンタが虎丸の頬に弾けるまで虎丸のおっぱいコールは止まなかった。

「………」
「……すまんのう、富樫…ワシつい、そのぅ…」
正座で詫びる虎丸の目の前に、バサリと富樫は雑誌を投げ出した。大きな目をきょとんとさせる虎丸に、尖り顔の富樫はドスの利いた声で言う。
「…先にヌいていいぜ、ったく、馬鹿みてえに騒ぎやがって」
雑誌を胸に抱きしめ、やけにきれいな目をウルウル輝かせつつ虎丸は富樫を見上げた。噛み付かれたりと酷い有様の胸をさすりながら立ち上がる。
「え?エッヘヘいいんか、すまんのう〜」
「だらしねえ顔してんじゃねえ、まったく…」

後日返却された雑誌、例のFカップグラビアのアイドルの顔部分にはどうしてだか虎丸の顔写真が貼り付けられていて、富樫の怒りを噴火させることとなった。






「ああ、お前は乳好きか」
「やっぱ巨乳に限るのう」
「…フッフフ、わかっちゃいねえな」
チッチと指を振る卍丸。
「女はな、脚だ。締まった脚にバーンとしたフトモモに尻、これだな」
「む、胸じゃろ…バインバインのおっぱい…」


卍丸虎丸間に、第一次乳尻大戦勃発。
モクジ
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