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奪還、城を後に

我ら、騎士である。
我ら、亡国の騎士である。
我ら、亡き女王の命を受けた騎士である。

女王亡き後、様様な噂を流したのはイチだった。
女王去る後、来る人ことごとくを追い返したのはロクだった。
高崎不動産が管理を任されていたのは知っていたので、それとなく入居者が居る事を聞き出しては城へ張り込んだ。
それがほぼ犯罪であることぐらいはわかっている。
わかっていてもそうした。




「あー、足がベタベタする…」
ロクはセメントまみれの脚をべたべたと鳴らして長い長い廊下を進む。正面はるか遠くにうすらぼんやり、内部への入り口が明かりに照らされて見えた。
目指して歩き出してはや数分になろうか、いまだオレンジの明かりは遠きままである。
「なあ、ロク」
「おう」
「……なんでもない」
「そか」
イチもロクの一歩後ろから靴底をなるたけ鳴らさないように気をつけながら歩いていたが、時折目指す明かりとの距離を確かめようと顔を上げる。そうしてまだ 目的地は遠い事を知って落胆のため息をついた。



「ウッフフフ、困ってますねぇ、ウッフフフフ」
薄暗い室内に男が笑っている。口ひげをひねりひねり、モニタの二人を笑う。モニタの中で少年達はああでもないこうでもないと言いあっている。
「さすがにリフォームへ一番金をかけただけはあるな、まるで気づいて居ないように見える。見事だ」
「ハ、ありがたきお言葉。さて、そろそろ焦れてくるでしょうから私は行きます。夕食はその後で」
久しぶりの出陣に心が浮き立ちます、そう言って男は仰仰しい一礼後、同じく久しぶりとなるマントを翻し消えた。
玉虫の羽がチカリと光って床へ落ちる、現在この城を支配している帝王はそれを拾い上げて、
「手入れのよいことよ」
そう呟いた。





およそ十分。

イチもロクも知らなかったが、きっかり十分経って二人は声を上げたのだった。

「おかしい!」
「おかしい!」
同時に声を上げ、お互いに顔を見合わせる。ロクが立ち止まって振り向き、イチもあわせて立ち止まる。
「ぜってーおかしーって!さっきからあすこにドア見えてんのに、全然近くならねー」
「確かに、十分ぐらい歩く家っておかしいね。よく考えたら、内装は変わっててもこの家、外観に手を加えた感じはしなかった」
「ああ、おかしい。でもこんなトコでモタモタしてらんねーから、いっそ走るぞ」
「うん」
せえ、の!
ピストルの音などはしなかったが、二人は同時に走り出した。ロクが駆け、イチが追う。ロクはクラスで二番目に足が速い、リレーの選手にも選ばれる。一方イ チは頭ほど手足は器用に動かない様子。えっちらおっちら走り出した。
走り出して一分、おかしな事に目指すドアはいっこうに近くならない。二人しておかしいと思いながらも全力疾走を続けるが、それでもドアが近づく様子はな かった。それどころか、遠ざかっているようにすら見える。
息を乱して二人は走り続けたが、とうとうイチが足をもつれさせて転んでしまう。
「うわッ」
「イチ!」
慌ててロクが立ち止まり、振り向く。イチはべったりと廊下へ伏したまま起き上がる様子がない、ロクがしゃがみ込んで肩を揺さぶろうとすると、手のひらがす いと持ち上がってそれを押し留めた。
「待って」
ロクはイチの上げた手のひらを見るだけ。その手のひらが真っ赤になっているのを黙って見下ろして、待つ。
「………」
「ロク、やっぱりここ、おかしい」
ちょっと自分と同じように耳を廊下の床へつけるように、イチは促す。ロクは言われたまま自分も四つんばいになって尻だけを残し、耳をぺったりと床へ押し当 てた。

ごうん…ごうん…ごうん…

何か、間違いなく生き物ではなく機械の唸る音がロクの耳へと聞こえる。ハッとして顔を上げたロクへ、イチは大きく頷いてみせた。
「ダイナモさ」
短くイチが言葉を発し、さらに壁へ手をつく。
「壁に手をついたまま、進む」
「おう」

壁に手をつき、一歩一歩確かめるようにして歩く。と、あれほど走っても近づかなかった目的地である明かりが近寄ってきた。
思わずロクは大声を出してしまった。
「これ、床が後ろへ動いてるんだ!」

イチが口を塞ぐのは間に合わず、暗い廊下へロクの大声は目一杯反響した。


「フホホホ、よく気づきました!」
いきなりおかしな笑い声が目的地である明かりのすぐ側、つまり真正面から響いた。声と同時に廊下天井に均等にぶら下がった小型のシャンデリアがすべてまば ゆく点灯し、廊下の全貌が明らかになる。
廊下の全貌と共に、目指すドアの隣に現れた男の姿も。
「私は鎮守直廊三人衆の一人、紫電房の番人。人は私を、男爵ディーノと呼びます」
シルクハットにカイゼル髭、マントを羽織った姿に二人は顔を見合わせた。
普通ならば笑い出してしまいそうな格好である、外を歩けば間違いなくオジサン何か手品やって!と子供にせがまれそうな。
しかしこの城において男爵という名はいかにもふさわしそうにみえたし、また、男爵ならばカイゼル髭にマントにシルクハットも必需品といえる。
言葉を失っている少年達へ、男爵はそれらしいゆったりとした口ぶりで声をかける。
「よくここまで来ましたね。フフフ、あなた方がどうしてこの先を目指すのかは知りませんが…ゴールはすぐそこ。しかし…」

ぎらりと抜刀の輝きで、男爵の目が輝いた。
二人の足元が大きく唸りを上げて後退を始めた。


「走れ!」
ロクが言うまでもなく二人は横並びに走り出した、が、走り出してすぐにイチがバランスを崩し掛ける。
「イチ!」
さきほどの転倒の際に、床下の機械に気づけたのはまさに怪我の功名。しかし怪我は怪我、足を捻っていたのである。
「オレはいい!先に行け!」
イチは足を庇ってその場にしゃがみかける、一歩先を行きかけたロクが振り向き、自分たちの入ってきた入り口あたりに下ろされた鉄格子が目に入った。

「フフフいいのですかそんな事を言っても、こうなりますよ!」

男爵が懐から一枚のカードを取り出すと、二人目掛けて放った。鋭く空気を切って飛んでくるカードに思わず二人とも目を瞑りかけるが、どうやら狙いは二人で はなくその鉄格子だったらしい。
つられて視線がそのカードを追い、鉄格子へカードがぶつかったところまでを見届ける。
ジュウ、
肉を焼くように景気のいいものではないが、二人が見守る中真っ黒な背中のトランプカードはかすかな悲鳴を上げて身を捩りながら黒く焦げた。

「……!?」
「ご覧の通り、その鉄格子には十万ボルトの電流が流してあるのでね。フフフああはなりたくなければ、競走馬のように走ることですよ、フホホホ」

無言でロクはイチへ駆け寄ると背中を差し出す。ためらうヒマは無さそうだった、イチも遠慮や詫びは後でと一つ頷いてからその背へ身体を預ける。
「悪いロク、この借りは今度返す!!」
「あったり前だ!行くぜ、うおおおおおッ!!!」
ロクはサラブレッドというよりは猪のような勢いで走り出した。





「なんだよ、裏口からだったのかよ」
モヒカン頭をばさりばさりと振るって、大きな落胆のため息をついた。今日こそは挑戦者が来るかとバッチリヘアスプレーを使っていたというのに。
後ろから入ってきた男はモヒカンにつき合わされ、一日やけに悪役のような格好、つまりビョウをどっさり打ったレザー姿でこの暑いのに待たされていたために 疲労がたまっている。
「どっちだっていいだろうが。明日はお前一人でやれよ」
「根性なしめ。ふふんそんで?ネズミは現在どこなんだ」
割烹着がお玉でモニタを指した。どれどれと覗き込むとブロンド睫毛が興味深そうに先んじて覗いている。
「今ディーノのところさ。見ろ、なかなか面白いことになっている」

少年が少年を背負い、何かわけのわからない事を喚きながらベルトコンベヤと化した廊下を疾走していた。





足が痛い。
息が苦しい。
頭が痛い。
胸が苦しい。
交互に痛みに苦しみに、修行僧のような苦行にロクは耐えている。ひたすらにイチを背負い、男爵を、正確には男爵の隣のドアを目指して走っている。
はっ、
はっ、
はっ、
最初こそ息継ぎをきちんと整え、二つ吸っては二つ吐くリズムを守っていたのだが、気まぐれに変わる足元の動きに早早と呼吸を乱されてしまった。
汗が額だけでなく全身から零れ、背中のイチを支える腕がヌルついて滑る。
「足並みが乱れて来ましたね、さて、お次は障害物競走ですよ。……一応お子様仕様にしておきました」

パチンと男爵が笑いながら指を鳴らす。
障害物競走?お子様仕様?アゴを突き出して走っていたロクはハッと顔を上げて男爵の方向を睨む。汗が目に入ってまるで視界が滲んでいた。
が、その滲む視界の中、何かこちらへ向かってベルトコンベヤを流れてくるものがある事はわかる。
おそらく膝下十センチほどの何か。
なんだろう、ぼんやりとロクが甘んじて接近を許していると鋭い声が飛んだ。
「ロク、飛べッ!!」
言われるがままにロクが飛ぶ、汗を拭こうとポケットから取り出したハンカチが落ちて、その障害物に触れたのが目に入る。
ハンカチ、たしか牛の絵柄の、母親がアイロンをかけたものだ。それが障害物に触れるやいなや、スッパリと真っ二つになった。

「!!?」
「フッフフそれは紫電房名物、刃怒流Ver.2…素晴らしい切れ味でしょう。引っかかったら即、足首とは今生のお別れとなりましょ」

「――!!!?」
次次とせり上がってきては二人の元へと襲い掛かる刃怒流。ロク一人ならば一定の間隔で来る、しかも膝下十センチの障害物など軽がると飛び越えられる。
だが今は人一人背負っている。当然足元もおぼつかない。
危なっかしいながらも次次流れ来る刃怒流を二つ、三つ、四つ飛び越えていく。廊下もおよそ四分の三ほどまで到達する。
このまま行けるか、行きたい。しかし現実はそうそう甘くはなく、とうとうロクの右足が悲鳴を上げた。
「ロク!」
イチが悲鳴を上げた。ロクは渾身の力を振り絞って目の前まで流れてきた刃怒流へ立ち向かうと、そのちょうど上へ足をかけ、飛び上がった。
「うおおおっ!!」
目をつけていたといえばつけていた。簡素で小型ながらも頑丈そうで、等間隔に並んだシャンデリア。迷わずそれへ手を伸ばし、掴む。

悲鳴のようなきしみを上げてシャンデリアが揺れる。二人分の体重を受けて、みきみきと嫌な音を立てていた。
「よしなさい!それはまだ、買ったばかりなのですよ!!」
男爵も悲鳴を上げた。頬を青くしてきゃあきゃあと腕を振り回す格好はなんだか男爵というよりはやっぱり手品師のようである。
にやりと疲れた顔に笑みを乗せて、さらにロクはぶら下がったシャンデリアを揺らす。振れ幅を大きく、さらに大きく。
そうして雲梯の要領、近づいた先のシャンデリアへ手を伸ばして、捕まる。一旦ロクだけ次なるシャンデリアへ捕まっておいて、イチはその後から続いた。
一人ぐらいの体重ならばシャンデリアも耐えている。ひとつまたひとつとシャンデリアへぶら下がりながら、とうとう廊下の端までたどり着いた。
「せぇ、のっ!!」
最後の最後は最も大きく、空中ブランコのようにシャンデリアを揺らし、飛ぶ。
目指すはもちろん廊下の床ではない、人を散散走らせた男爵の腹目掛けてである。
「くらえ――!!」




この瞬間、少年達は鎮守直廊を攻略達成したのであった。










落ち着かない。
落ち着かない。
落ち着かない。
普通であれば少年達は侵入者である。警察に突き出されて保護者を呼ばれても仕方がない立場である。
その侵入者である自分たちが、どうして真っ白なテーブルクロスのかかった食卓について、豚汁の椀をくばられているのか。
豚汁の椀の隣には白飯がうずたかくよそわれた茶碗に、漬物の小皿。酢の物の小鉢。
テーブルの中央には大皿が二つ。レタスやきゅうり、茗荷やシソを細切りしたものが大皿にどんと乗っており、その上には見事に焼き色のついたカツオのたたき が並んでいた。
隣には様様な味付けを楽しめるようにとタレが数種類添えられている。
飯に汁に副菜に主菜。
これ以上ない夕食の風景である。
「どうした」
上座に座った大男が二人へ声をかけた。大男、で言い表せるほど小さくはない、立派で雄大で驚愕な大男である。ゲームやアニメで見るラスボスだ、二人は直感 でそう感じていた。そしてそのラスボスが腰掛ける立派な椅子こそ、彼らの目指す玉座である。彼らが三人がかりで腰掛けてようやくきついぐらいの椅子が、 ぴったりとラスボスの身体に寄り添っている。
「い、いえ…」
「遠慮することは無い。貴様等は勝ったのだ」
二人の様子を遠慮と取ったのか、ラスボスは案外柔らかい声で笑うと箸を手にする。その箸も立派で、あれで殴られたら死ぬかもしれない、イチはヒッソリとた め息をついた。
(遠慮するなって言われてもさぁ…)(なあ…)
その食卓には得体の知れない、いずれも見た目からして屈強そうな男四人と、先ほどの廊下で渡り合った三人がついている。
大男ばかりの食卓につかされて少年は緊張するなと言うほうが無理であった。
「……さあ、召し上がれ」
やけに顔色の悪い割烹着に促がされて、少年達は箸へと手を伸ばす。
が、
「おい、貴様」
「!!」
ラスボスの隣に居た、恐い顔をした男が声を上げた。二人へ一気に緊張が走る。
恐い顔をした男ときたら、口周りの髭といい、ラテンでガチムチな風体といい、ビョウをどっさり打ったレザーな服装といい、街中で見かけたら絶対について 行ってはいけない人種である。イチが思わず仰け反る。椅子を蹴って走ろうにも、二人の足は床につかないのだ。
「手の平を見せろ」
ラテンレザーが食卓に身を乗り出して腕を伸ばした、とっさにロクも腕を引こうとしたのだが、捕まえられてしまう。ガタイのわりにえらく身が軽い、ラテンレ ザーはロクの手のひらを睨んで低い声で咎めた。
「怪我をしているのなら、早く言わんか」
「……え」
イチが驚いて覗き込むと、ロクの手のひらにはざっくりと何か尖ったものが刺さったらしい傷が生生しく開いていた。
ラテンレザーが何事か青白割烹着へ告げると、手当てはたちまちのうちに行われる。消毒から止血、包帯を巻くに至るまで。
「そっちの貴様は食べてからだ。足が痛むんだろう」
イチは恐る恐る、すみません、と細い声で答える。

やけに夏の日本家庭にありがちな食事が不似合いだったが、味なんてわかるはずもない。総勢八人の大男が物を平らげる様ときたらそれはそれは圧巻である。
ラスボスの食べ方はまさに覇王、青白割烹着がまめまめしく世話をやき、ゆったりと口に運び、咀嚼する。
たとえ食べているのがカツオのたたきだろうが、肉汁したたる分厚いステーキだろうが、ふんわり桃ムースのオムレットだろうが、変わりなくこのラスボスは食 べるのだろうなと少年達は思う。


ラスボスが尋ねた。
「貴様達の目的は」
「あ……」
目を見て話すなんて、とうてい無理だ。イチが顔を伏せる。
「その玉座に、用があって」
ロクが必死に口を開く。玉座に用がある、言い方が悪かった。覇王に向かっての宣戦布告と取られても仕方がない。
思わず青白割烹着がラスボスの側に控えようと立ち上がりかけたのを、当のラスボスは手で制した。
「この邪鬼の座を狙うか…野心は身を滅ぼすぞ」
「い、いやっ、いや、」
そうじゃない!一気に開戦ムードになりかかった食卓。モヒカンなどは嬉嬉として箸を逆手に握っていた。
「貴方が腰掛けている、その椅子に…オレ、いや、ぼくらの宝物を隠しているんです」
震える声だがイチがはっきりとそう言った。ロクも一つツバを飲んで、
「ここはおれとこいつと…あと、いや、おれ達がずっと秘密基地にしてて、そんで…ここに、宝物隠したままなんだ」
「宝?」
肘掛に頬杖をつき、ラスボスが頬に翳る程度の笑みを乗せる。
「……よかろう」
たっぷりと沈黙が落ちた後、ラスボスは大きな存在感を持って玉座から立ち上がった。
今しかないと二人は玉座へと駆け寄る。間近で見ると改めて大きな椅子だ、それをもてあます様子もなく腰を下ろしていたラスボスに改めて驚きながら、
肘掛へと手をかける。滑らかな木製のそれには豪奢な厚手のクッションが取り付けられていて、簡単には外せないように見えた。
が、ロクがそのクッションの隙間へ手を滑らせると簡単に外れて持ち上がる。現れた空洞へイチが手を突っ込んだ。

「……あった、」

拳大の琥珀が、イチの手には握られていた。まだらに色を乱す琥珀の中に何かかげりがある、よく見れば中に蝶蝶が閉じ込められているのであった。
食卓の明かりが中へと染み入っては金に濃茶に光をかえす、そのかがやきの息遣いは蝶蝶が生きているかのように動いているようにも見える。
「見事なものだな」
ブロンド睫毛が感嘆の声を漏らした。こうも見事な琥珀など昨今ついぞお目にはかかれない、郷土の博物館ではもったいないほどの品である。


『ここに隠そうと思うんだ、やっぱりお城には宝物が必要だよね』
ナナはそう言った。ナナは女王だ。
尻込みする自分たちを叱咤して、この城を秘密基地にしたのもナナだった。
『わたし、転校するの。だけどね、いいこと?あんたたちはちゃあんとこの宝物守ってよね』
『ナイトは宝を守るのよ』



「あの、これ…」
大変に価値のあるものだとはわかっている。しかしそれでも、この城の宝は自分たちで持ちたかった。ロクがおずおずと口を開くと、鷹揚にラスボスは頷いた。
「良い」
「え、え」
「雨が降る、大雨になろう。傘を持ち帰るがいい」
えっ、窓の外へ視線をやるも、夜の闇ばかりでまったくそんな素振りはない。首を傾げた二人へ青白割烹着が雨傘を二本持って走ってくる。

二人は何も言えなくなって、その場に深く深くお辞儀をした。その後イチは足の手当てを受ける。
ロクはそれを見守っていたが、ふとラスボスへ視線をやった。
視線を受けるとラスボスは目を細めると、
「次は正面より来るがいい」
どこか楽しむような響きで持って告げる。
「次、」
「次は俺等相手だ、突破できっかな」

ワハハハハッ、モヒカンがけたたましく笑った。
(勘弁してくれよ!)(…次はルート3で行こうな)(オウ)





「時折邪鬼様のところへ遊びに来てください、喜びますから」
青白割烹着が薄い笑顔と共に傘を差し出すのを受け取りながら、ロクは改めて、
「また、来ます」
そう深く一礼をするのであった。





城を後にするなり、轟音と共に雷が夜空へひかり、
雨が降り出した。
モクジ
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