バレンタイン事変、女子の本懐
「いいか諸君、かの日ばかりは我らのものだ」
堂堂と声を張る。
「かの日ばかりは」
二月十四日。
「この日は誰がなんと言おうが、我ら乙女の日である!」
右手を上げた。胸を膨らませて空気を吸い込む。上げた手を、拳に。
「我らの同胞に勝利を、行け!」
拳を開き、指先に力を入れてそのまま振り下ろす。その号令に部屋へと集まっていた者どもは暗い部屋を駆け出していく。
司令官エリザベッタと呼べ、と彼女は言った。黒髪黒目のエリザベッタは早速戦略を組み上げる。無論偽名だ。
見るからに映画に出てきそうな、戦略を組み上げるためにでもありそうな革張りのソファに脚を投げ出して、まずは情報からだと腕を組んだ。
「出撃!!」
二月初め。
「標的はどうだ」
司令官エリザベッタは双眼鏡を覗き込む同胞の肩を叩いた。黒い布を頭からすっぽりと被っていた、オカッパ眼鏡が振り向く。布に隠れた前髪を揺らして首を横
へ振った。
「駄目、この間のせいで警戒が厳しい」
「そうか」
黒い布を脱ぎ捨てたオカッパは司令官へと自分が今使っていた双眼鏡を差し出した。一つ頷いて司令官はそれを目にあてがう。マスカラを塗らずとも長い睫毛が
邪魔ではあったが視界は良好である。
夕暮れの学び舎から身を乗り出して、司令官は敵地を偵察した。
「六つの傷だったか」
「いいや、それはターゲットの友人だ」
司令官への返答を寄越したのは、たった今この科学室もとい最前線偵察室に入ってきた百七十五センチはあろうかという長身であった。長身の手には分厚いA4
の束がある。後ろを振り向かず、司令官は後ろへ手だけを伸ばした。双眼鏡を覗き込んだままその紙の束を受け取る。
「ターゲットはよほどの好漢と見える」
そう言いながらも双眼鏡から目を離さない。司令官のもらした言葉に二人は頷いた。セーラーの襟を直しながらオカッパが司令官の代わりにその書類を手から
取って読み上げる。
「ターゲット、J…これは本名ではない」
長身が問う。
「偽名か」
「そのようだな。…で?」
オカッパがぺらりと一枚書類を捲る。そこには男塾一号生、Jの写真がクリップで留められていた。写真は隠し撮りのようで目線は正面ではない、ほぼ横顔であ
る。トレーニングを終えたらしいJが汗を手ぬぐいで拭っている写真であった。惚れ惚れするほどの腹筋へ一瞥をくれてから、司令官は促した。
「今あった六つの傷の男、伊達臣人と言う。ターゲットをガードしているんだがこれがまあ手ごわい、先日なぞ」
苦笑を浮かべてオカッパが顎をしゃくった。その先にはレンズを割られた双眼鏡が一つ寂しげに化学室備え付けの机へ転がっていた。
「あの様か、」
「あの様さ」
オカッパが肩をすくめた。長身のセーラーが苦笑する。
「あんなのがゴロゴロ居るんだって?男塾ってのはとんでもないところだな」
「あれは特例だろう、それと、ターゲットの隣を陣取っている…ハチマキ」
おい、と司令官に促され、オカッパは数枚紙を捲る。現れた写真には隠し撮りのはずなのにきっかりしっかりとカメラ目線のさわやかな男前であった。
「剣桃太郎、一号生筆頭だな。あれは強いよ、勝てない」
オカッパの写真を見るなり、長身のミもフタも無い言葉に司令官も流石に双眼鏡から目を離した。強く押し付けていたせいで白い肌へと赤味が差している。
「勝てないか」
司令官は重ねて問う。長身も、オカッパも頷く。
「無理」「無茶、無謀」
声を重ねて言われてはどうしようもない、無言で司令官は暗幕をサッと引いた。放課後の科学室に夕日があかあかと射して彼女達の頬を照らす。
「よし、この剣桃太郎、伊達臣人両名はどうしてもターゲットから引き剥がすしかない。どうにかしよう」
「了解」
「司令、それじゃあ実動部隊へ指示を」
「ああわかった、すぐに行こう。それから、」
「何か」
司令官は黒い布を手渡しながらオカッパへ言った。オカッパは生真面目にその黒い布を畳みながら答える。
「今後ここからの偵察は中止だ、暗幕を張ってもレンズを打ち抜くような化け物が次も同じ場所からの偵察を許すとは思えない」
「了解」
彼女らは散った。
二月十四日のために散開。
【Jという男について】
身長は百九十センチ以上(注:目視による)アメリカ人。男塾へは途中入塾。米海軍アナポリス海軍兵学校に元は所属していたらしい(注:あくまで噂による)
午前五時半には起床を済ませているようで、六時十分前には校庭に出てくるのが毎日確認されている(注:観察を始めて十日、例外はない)
桜の巨木へ下げたサンドバッグを叩く訓練、ランニング、鉄棒での懸垂をそれぞれ数回ずつ繰り返すトレーニングを行っている。戦闘スタイルはボクシングらし
く、拳を丹念に鍛えている様子が生活の中にも見て取れる。
そのパンチ力はすさまじく、一瞬にしてあらゆる物を砕くと言う(注:建設中のビルから落ちてきたコンクリートの塊をナックルはあったもののパンチで砕い
た。目撃者アリ)
「郵送というのはどうだ」
そんな声が上がった。すぐに誰かが首を振る。
「中身が食品で、しかも二月十四日。宛名なぞ見られずに誰ぞの胃袋へ収まってしまう」
「それに」
誰かも声を上げた。
「男塾塾生たるもの、毒物の可能性を考えるだろう。いや、このターゲットが好漢であるのはわかっている、だが」
誰かが継いだ。
「この伊達臣人と、剣桃太郎。二人が許さないだろうな――」
ため息。
「やはり、並み居る男達を蹴倒してターゲットへ向かうしかない」
おう、
おう、
賛同の声が上がった。
「なんだった、ナントカエリカだったか」
体育館で作業を進める同胞達をつぶさに見渡し、司令官は後ろ手に手を組みながら呟いた。答えはすばやく背後に控えた長身からあった。
「ああ、エリカ。あれが余計なちょっかいを出したものだからあんなにうちの学校は警戒されてしまった」
「これだから普通科は困る」
「一緒にされてはたまらない、我ら、」
我ら、ナデシコ連合。気高く、強く、しぶとく、美しく、潔く!
自分を磨き、頼るに値するべき殿方と歩く大和撫子の群生であれ。
この一見して普通に見える女子高の裏の顔でもあった。
長身が胸を張った。司令官も大きく頷く。
「それで、粛清は」
「済んだ」
うん、司令官は感慨も何もなさげに頷く。髪の毛を振りたてるようにして右手を上げた。腹の底から体育館全体へ渡らせるように声を張る。
「諸君!」
作業をすすめていた三十名ほどの女子高生達はいっせいに顔を上げ、立ち上がる。ジャージであれセーラー服であれ、どの顔も芯の強い顔をしていた。
「決戦はいよいよ明日だ、用意の程はどうだ!」
「順調!!」
いっせいに、異口同音に返ってきた返事に司令官はにんまりと笑った。腰に手を当てて、頷く。
「上等、それで…ガラ」
ガラ、と呼ばれて前へ進み出たのはいっそ哀れなほど痩せた小柄な少女である。髪の毛を少年のように短く刈り込んでいるために首が折れそうに見えた。
おどおどとしている。なるほどあだ名の由来であるトリガラにそっくりであった。
「……」
うつむいたまま手にしているのは、ターゲットと呼ばれているJのナックルであった。ぎゅうと大事そうに抱きしめている。
「ガラ、これはお前の頑張りにかかっている」
司令官は優しげな顔でガラと呼ばれた少女の肩を叩いた。骨の浮いた肩だったが、しっかりとその手を受け止める。
「征けるか」
「………」
舌が凍り付いたようなガラの肩を司令官は抱く、強い印象のまなじりを跳ね上げて宣誓す。
「諸君、明日はガラを何が何でもターゲットの元へと届ける。今までよくぞ辛抱した、まことに結構だ」
打って変わって静かな声である。それでも耳を澄ませば全員に深く染み渡る声であった。
「ガラ、お前の根性を見せるがいい」
ささやきにガラは小さく頷いた。
前日である。
決戦前日である。
司令官エリザベッタは檄を飛ばす。
二月十四日、朝。
夜中に降った雪のせいで男塾の校庭は真っ白に化粧されていた。皆、吐く息が真っ白い。引き結んだ唇も血の気を失っている。
きりりと詰めた髪の毛を撫で付け、司令官エリザベッタはセーラー服の肩に木刀を担いだ。女子の制服、特攻服と言えばセーラー服である。
「さて諸君、古来より奇襲が繰り返し行われたのは、それが有効だったからだ。だがあえて、ここは相手へ名乗りを上げるべきだと思う」
乱れなく男塾正門前へと整列した勇士全部で五十名程度。男塾の窓からは既にその姿を見咎めて騒ぎになっている声が聞こえてきている。
「我ら白百合学園ナデシコ連合、一号生のJなるものに用があって参った!!」
司令官は最前列に立ち、地面に木刀を突き立てる。
問答無用とばかりに転げ出てきたのは特徴的な太いつながり眉と、サザエさんヘアーの男だった。
「白百合ィ!?お、お、おめえらまた俺らだましに来やがったな!!」
「富樫なんかなぁ、未だに、未だにカワイソーなんじゃぞ!!」
なるべく穏便に済ませたい、司令官は言葉を連ねる。
「先日の非礼は詫びよう。が、今日はJというものに」
言葉は遮られた。更にその二人の塾生の後ろから一号生と思われる男達がわらわらと出てきている。目を凝らしてもJなる男の姿は見えない。
出てきた男達は皆、自分達が女子高生であるということ以上に敵と見なしているのが肌に感じられた。
「帰れ!」
「おめーらなんかなぁ、バーカ!」
「帰れ!帰れ!」
わあわあと騒ぎ立てることになってしまった。
「本当に申し訳ないことをした。済まなかった」
司令官は頭を深々と下げる。エリカ、名前を覚えるのすら腹立たしいその女達は可憐な容姿を利用して男塾の生徒を引っ掛けては屈辱を与えて遊んでいたという
のである。男であればその屈辱いかばかりだろうか、司令官は心から詫びた。
しかしそれを繰り返し繰り返し行っていたという上、今回司令官が指名しているのはJである。塾生達はあの純朴なと言っていい素直な友人達を心から案じてい
る。
衝突は免れないか、司令官は背後で縮こまっているガラを一度振り向いた。真っ青になっている。
「帰れない。Jという男に、会わせてほしい」
一歩司令官は進み出た。と、運悪く塾生が振り上げた拳が肩へと当たってしまった。それを見た長身がその塾生を横から小突いた。
「何をする!」
「アイテッ、て、て、てめえやりやがったなァ!」
女とは言え容赦はしないと、頭に血の上った塾生達と、
「こうなっては仕方が無い、総員いいか!」
どう見てもやる気満々だった女子高生はもみ合いになりながら乱戦の模様を見せる。
「出てこい、J!」
司令官は木刀を構えながら校舎へ気を吐く。掴みかかってきた塾生に胸倉を取られながら怒鳴った。
ガラがびくりと震えたのが肩でわかる。
「おい、」
腰を浮かせかけたJを、伊達は制した。冷え切った目を校庭へと移す。泥仕合の様子を見せるそこを鼻で笑う。
「…しかし伊達、呼ばれたからには」
「行くな」
伊達は心底このアメリカ人の友人(友人と声に出して呼ぶのは恥ずかしすぎる)を案じている。この心根の優しい男が傷ついたり悲しんだりするのは御免であっ
た。先日涙にくれた富樫の顔を思うとその案じ方にも熱が入る。
「伊達はお前が心配なのさ」
現れた一号生筆頭、剣桃太郎は鞘に収めたままのダンビラを下げて戸口に立ってそう六つの傷を持つ友人をからかった。
「うるせえぞ桃」
「俺なら心配いらん」
Jは口をへの字に結んだ。怒っているわけではない、気遣いは嬉しいがどうその感情を表現していいかはかりかねているのだ。
「お前は後で出ろ、…俺が奴等の真意を見てやる」
伊達が立ち上がった。手には蛇轍槍。やる気満々と言った風情である。
「伊達が行くなら、俺も」
伊達に続こうと立ち上がろうとするJに桃は優しく言った。
「J、汲んでやれ伊達の気持ちを。フッフフいいところを見せたいのさ、伊達は」
「桃!」
桃を睨んでから、伊達は低い笑い声を立てて校庭へと出陣した。
砂埃だって、ぬかるんだ雪だって、何もかもがこの男の味方なのだ。
どんなものだって伊達臣人という男を引き立たせる材料となりうる。泥沼と化した校庭とてその例外ではない。
ざり、と足元の雪をにじりながら上半身裸で現れた伊達臣人は全身に闘気をみなぎらせている。肌が真珠に照るようにすら見えた。
その姿気迫に気づいた司令官はすぐさま身を返し、ガラをかばうように進み出た。手の木刀を構える。
大和撫子たるもの、ナデシコ連合司令官たるもの、文武両道であらねば。
司令官でなくともこのナデシコ連合の生徒達は皆武芸を磨いている。しかしそれはあくまで道場拳法程度のものに、味がついた程度。
気迫に押されてナデシコ連合は思わず一歩後退した。
「…出たぞ、伊達臣人だ!!」
誰かが叫んだ。リサーチされていたことは伊達、重々承知である。知りたいだけ俺を知れ、知ったところで俺は負けん。その絶対なる自信が伊達を今こんなにも
輝かせている。輝きの一因に、背後の窓から身を乗り出さんばかりにして自分を見ているJの視線というものもあった。
伊達が息を大きく吸った。胸郭がくっと上がって、締まった腹筋が膨らむ。
来る、誰かが息を飲んだ。
格が違う。
自分達のようにただ木刀を持ってはしゃいでいるのとは、何もかもが違いすぎる。
「俺の槍は、女は殺さん…だが」
向かってくるなら話は別だ。膨れ上がる闘気とは打って変わって静かな、鏡水面の如き声で伊達は言った。しかし力は確実に声へと染みとおっている。
「現れたな伊達臣人、総員ッ!」
司令官が号令をかけた。今取っ組み合っていた目の前の敵を放り出してでも、居並ぶ。陣を組んだ。鶴翼の陣である。両側に大きく開いて、伊達と全員で向き合
う。
「来るかよ?」
舌なめずりせんばかりに手招きをする。
「伊達臣人相手に、接近戦をしかける程馬鹿ではない」
司令官が右手を上げた。三段に並んだ前列が、準備していた飛び道具へ持ち替える。弓道部が使うような長弓である。
弓がずらりと並んで伊達へと矢を向けているというのに伊達は平然としたものであった。
「ぅてェッ!!」
号令と共に、伊達へ向かって数十本の矢が一斉に空を切り裂いて飛んだ。手数を増やすべく三本一度につがえて撃ったので、空に一瞬にしてスズメの群れが現れ
たように見える。
ワイヤーアクションを多用する中国映画を思い描いたらそれに近い。
矢が伊達を射抜く、とはそれでも誰も思っていない。
微笑みすら浮かべて、ただニ三槍を振るったようにしか見えない。
だというのに、地には折られた矢が雨のごとく降って地をうがつ。
伊達の微笑が濃くなる。矢が落ちる音の中背後で息を飲んだのが聞こえた、Jのものである。
対多数に強いのは、何もお前だけじゃねえんだぜ。伊達は口元に得意げな微笑を浮かべた。
第一陣は矢を撃った瞬間にしゃがんだ。第二陣!
「第二陣、てェッ!!」
司令官の声はまだ心を折られていない。第二陣それは、
「科学部!」
号令と共に投げられたのは改良した白煙筒。伊達へ目掛けて投げても斬られるのがオチだというのはわかっている。だからあえて山なりに投げた、
伊達が槍を一度振るう、投げたうちの半数が斬られて雪の地面へと落ちた。
だが残った白煙筒は勢い良く白煙を噴き上げる、その一瞬出来たチャンスを逃すことはしなかった。
「第三陣!!」
第三陣はラケットを構えている。大和撫子たるものテニスくらいはたしなみがあった。そぉれぇ、と掛け声がかかって、ボールを頭上へ投げる。
「てェッ!!」
黄緑のボールが一斉に伊達の元へと向かった。
同時に、陣から一人のやせっぽちが飛び出す。
ガラであった。
「行け、ガラ!行って勝利を勝ち取って来い!!」
脚をもつれさせながらガラは伊達の横をすり抜けるようにして駆け出している。
つい先日、ガラは死にかけている。
ふらふら歩いていたら頭上に巨大なコンクリートの塊が降ってきたのだ。
あ、死んだ。瞬間そう思って頭を抱えるヒマもなかったのだが、いつまで経っても死が訪れない。おそるおそる目を開けてみると背の高い男が自分を抱えるよう
にしながら立っているではないか、しかも足元には砕けたコンクリート片。
「……」
あの、とも、貴方が、とも何も言えなかった。
ただ必死にしがみついていたせいで自分の手の中にはその男のナックルだけが残されていて、わかったのはその人が男塾の生徒だということ。
それ以来頭からその人の事が離れないのだ。理由も感情もわからないまま司令官に話してみたら、
「お前の思い、ぶつけるべきであろうな。…大和撫子ならば」
そういうことになってしまった。
ガラが転ぶ、起き上がる。仲間達の稼ぐ貴重な時間を無駄には出来ない、一度盛大に転んで額をすりむいたがなんとか窓枠に取り付いた。頭を突っ込む。
いた!しかし声にはならない。
会いたかった人、J、Jさん、その人は驚いたようだったがガラの元へと近寄ってくる。ガラは背中に汗をかく。
「ガラ!渡せッ!」
司令の声が飛んだ。
「チョコレートを渡すんだ!!」
今日は乙女という乙女に祝福のある日だ。
チョコレート?
伊達の唇が、そう辿った。秀麗な眉が驚きにひそめられる。ナデシコ連合は攻撃の手を止めた。
見守る。
「…俺がJだが」
「フッフフ、用があって来たんだろう」
Jという人間は静かに名乗った。隣のハチマキは伊達と同等以上の気を放ちながらガラを圧迫する。
「…何だ」
「……あ、あぐ……」
ガラは言葉を失っている。とにかくチョコレートを、と思ってポケットを探る、
無い。
ガラは真っ青になった。落とした。落とした。なくした。あの乱戦の最中。
「……どうした」
「どうした?」
ない、ない、ない、ない、ない、
ガラは真っ白になった。
何か、何か、何か、
背後に気配が迫っているのだ。あの恐ろしい鬼の声が迫っているのであった。冷たくなりかけている。
「…あ、あり、あの、せ、センキューッ!!!」
それだけ叫んで、逃げた。脱兎のごとく逃げた。
「て、…撤収ーッ!!!」
司令官の号令により、ナデシコ連合は逃げた。
その後伊達は校庭に転がっていたチョコレートの包みを発見してしまい煩悶することになったが、
それでも男としてそのチョコレートをJに手渡すことにした。
「お前は本当に律儀で、いい男だな」
桃にそう言われても仕方がないと伊達は黙る。
なんと言っても二月十四日は乙女の日なのである。
そしてこれが後に三月十四日事変に繋がるとは誰も思っていなかった。
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